抄録
言語システムは少なくとも2種類の音韻知識を蓄え、系列情報処理に利用可能である。1つは要素間連合(e.g., どの音素がどの音素に続きやすいか)の知識であり、もう1つが文脈―要素連合(e.g., どの音素がどの位置にきやすいか)である。本研究ではこのような音韻知識を系列情報処理モデルの1つである単純再帰ネットワークがいかにして蓄え利用しているかを検討した。音韻性短期記憶課題への音韻知識の寄与を示す行動データのパタンをモデルはシミュレートした。モデルは2種類の音韻知識の相互作用を再現するとともに、要素間連合の効果はしかし文脈―要素連合から分離可能なことと、それが語内位置の後方で現れることを再現した。文脈―要素連合が語内位置の前方で効果を現わすという行動データは今後さらなるモデリングが必要であることがわかった。