抄録
アドホックカテゴリーとは,予め意味記憶に成立しておらず,特定の目的のために文脈に応じて即興で生成されるカテゴリーとされるが,その表象の構造について十分に検討されていない。田中・中條(2014)は,リスト学習によって生じる虚再認を指標にしてネットワーク構造を検討し,事例どうしの結びつきが弱く,DRMリストの表象構想と同様にカテゴリーラベルを介して事例が結ばれた構造を提案した。しかし,アドホックカテゴリーはカテゴリーラベルに依拠して自発的に生成されることから(Barsalou,1983),カテゴリーラベルを上位概念とし,事例が体制化された階層構造であると考えられる。そこで,DRMリストの学習で生じる虚再認と比較したところ,カテゴリーラベルに対する虚再認が生起しにくく,事例とカテゴリーラベルが容易に区別されていることが示され,階層性を有する表象構造であることが示唆された。