抄録
心的回転課題の成績は,視覚手がかりにより身体への見立てが可能なとき向上することが知られる。蒔苗ら(2015)はこのような身体への類推には男女差があり,身体化を促す視覚手がかりの有効性に個人差があることを示した。今後,身体化のための視覚手がかりの利用に関する発達過程を調べることを目指し,本研究はパーソナルコンピュータを用いた実験よりも,時間的・身体的制約が少なく簡便に行える紙の検査を作成し,心的回転課題における身体化を捉えることができるのかを検討した。検査用紙には,標準刺激と4つの回転刺激があり,キューブの上部に顔があるものとないもの,また全体形状が身体模倣可能なものと不可能なものがあった。課題は標準刺激と同じ形状を回転刺激から2つ選択することだった。大学生189名を対象にした結果,顔の付加と模倣可能性による統計的に有意な成績向上が認められ,作成した検査の有効性が示唆された。