抄録
人物の内面特性や能力を顔の見た目から十分な正確さで読み取ることは難しいとされているにもかかわらず、多くの人が顔からさまざまな特性を判断できるという信念を持つ(i.e., 人相学的信念)。実際に、道徳違反的な行為に対する評価にも顔の印象が影響を与えることが知られている。しかし、人物の顔がどのように道徳的判断に影響を及ぼし、また、その過程に評定者の人相学的信念がどのように関わっているのかについては明らかになっていない。本研究は、道徳違反的行為から連想される顔のステレオタイプに評定者の人相学的信念の強さが及ぼす影響を検証することを目的とした。実験では、平均顔にランダムな視覚的ノイズを付与した顔画像を複数生成し、逆相関法により道徳違反と関連した行為に対する顔ステレオタイプを推定した。その結果、道徳違反的行為に対する顔ステレオタイプの強さは、評定者の人相学的信念の強さと関連しないことが分かった。