抄録
先行研究によれば、信念の更新や情動制御は検索誘導性忘却のような記憶の制御を通じて達成される。認知(行動)療法において、治療者は患者に、ある出来事についての非機能的でネガティブな解釈に対して機能的な解釈を生成することをしばしば求める。この技法は認知再構成と呼ばれ、出来事に随伴するネガティブ情動の低減に効果があることが知られている。ここでは、出来事を手がかりとして、機能的な解釈と非機能的な解釈との間に検索競合が生じていると捉えることができ、検索誘導性忘却の枠組みにおいて認知療法の作用機序を説明できる可能性がある。実験において、参加者はネガティブな出来事と非機能的解釈に対して機能的解釈を生成した後、半分の出来事について機能的解釈の反復検索を行った。しかしながら、いずれの実験においても、非機能的な解釈の想起、信念、情動に対して、検索練習に特有の効果を見出すことはできなかった。