抄録
選択のオーバーロード現象とは,多過ぎる選択肢によって選択行動が抑制される効果をさす。本研究ではパワープライミングによって参加者の促進焦点ないし予防焦点を高めることが,選択のオーバーロード現象の生起にどのような影響を及ぼすかを検討した。103名の女性参加者には,パワープライミング課題(ハイパワー:促進焦点,ローパワー:予防焦点)の実施後にコスメ商品を3種類ないし10種類呈示し,欲しい商品の1~3位までの順位付けとその順位付けに対する満足度と後悔度の6段階評定を求めた。呈示する商品は,価格帯(高価格帯:デパコス,低価格帯:プチプラ)と商品属性(促進型商品:リップ,予防型商品:ファンデーション)をそれぞれ操作した。実験の結果,促進型商品は両パワー操作条件で高価格のときに選択のオーバーロード現象が生起した。一方で予防型商品は,ハイパワー操作を受けた参加者では両価格帯で選択のオーバーロード現象が生起したのに対して,ローパワー操作においては低価格のときのみで生起が見られた。