抄録
豆腐の製造過程で排出される生おからを,主食となるパンへ添加することを試みた。生おからの水分は70%前後であるが,80~180℃のオーブン内で加熱することにより,簡単に乾燥・焙煎処理を行うことができた。焙煎により,生おからの水分値以上に重量が減少した。焙煎したおからの吸水率は低下し,その低下の速度は焙煎温度が高いほど,また焙煎時間が長いほど速かった。焙煎によりたんぱく質量が減少し,たんぱく質の組成も変化した。Native-PAGE,SDS-PAGEの結果から,おからに含まれるたんぱく質は焙煎処理により変性あるいは分解し,複合体の解離や高次構造の崩壊を起こして溶解性などの性質が変化し,結果的におから全体の吸水率を低下させたものと考えられた。焙煎おからを10%代替添加したパン生地にはグルテンの形成がみられ,パンの膨化状態も改善した。焙煎によるおからの性状変化が,パンの膨化状態の改善に有効に作用したものと考えられた。