抄録
脱水シートを用いた,減塩かつ中干品の干物製造条件(塩漬条件及び乾燥条件)をマアジ,マサバ,サンマ,マイカについて確立した。生菌数に及ぼす脱水シートの影響を検討するため,従来の機械乾燥法ともう一つの代表的な干物製造法である灰干し法で製造した干物を低温保管(5℃)した際の生菌数の変化を経日的に計測したところ,脱水シートを用いて製造した場合のほうが有意に低かった。機械乾燥法による製造過程では,高温(27℃)条件での製造に加え,乾燥機内での付着菌や空中落下菌による二次汚染の影響が考えられるが,脱水シートを用いた場合は,干物製造時にシートが魚に密着しているため空気中の微生物による付着が少ないこと,また低温(5℃)下で脱水・乾燥が行われるため,微生物の増殖が遅いことが考えられた。灰干し法は,操作が煩雑であるため干物製造過程における微生物が混入しやすい。また,脱水シート法による脱水に比較すると,脱水効率が低く,徐々に脱水されることから,微生物が増殖しやすいことが考えられた。以上のことから,脱水シートを用いた干物製造方法は,他の代表的な干物製造法と比較し,微生物制御という点においても優れた方法であるといえる。