日本調理科学会誌
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45 巻, 1 号
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総説
報文
  • 大崎 聡子, 市川 朝子
    2012 年 45 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     わが国では,米の消費拡大を目指して米粉の利用法が模索されている。本研究では,絹フィブロインやキサンタンガムを添加して米粉パンを調製し,それらの特性を,グルテン無添加で調製した米粉パン(対照)の特性と比較した。その結果,以下のことがわかった。絹フィブロイン添加米粉パンの比容積,硬さ,付着性は対照と比較して有意に上昇した(p<0.05)。キサンタンガムは,ゾルの状態で,加水量を105%から115%に調整して添加することで,対照と比較して比容積は有意に上昇,硬さは有意に低下した(p<0.05)。さらに,絹フィブロインと米粉糊の併用添加した米粉パンは官能評価において対照と比較して高評価を得た(p<0.05)。無添加生地(対照)あるいは絹フィブロイン添加生地は24時間“ねかし”後に調製を行うことで,比容積が有意に上昇し(p<0.05),きめが細かくなった。対照米粉パンの官能評価では,生地の“ねかし”により,有意に好まれる評価を得た。
ノート
  • 高田 優子, 鈴木 宗治, 内田 孝雄, 三枝 維彦
    2012 年 45 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
    1.市販醤油の油脂の乳化力を調べたところ,醤油の色(430 nmの吸光度:メラノイジン量の指標)と油脂の乳化力に相関関係があることを確認した。
    2.醤油にぶどう糖を加えて加熱反応させたところ,加熱時間とともに色(430 nmの吸光度)が増加し,更に強い油脂の乳化力を持つようになった。
    3.20種のアミノ酸とぶどう糖を加熱反応させ,モデルメラノイジンを作成し,各々の油脂の乳化力を調べたところ,アラニン,グリシン,スレオニンとブドウ糖のモデルメラノイジンに強い乳化力があることを確認した。これらのアミノ酸から生成されたメラノイジンが醤油の乳化力に関与しているものと推定された。
  • 上中 登紀子, 升井 洋至, 花﨑 憲子
    2012 年 45 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     金時豆を用いて煮豆の煮崩れ防止や破断特性についてトレハロースの効果を調べた。上白糖を甘味料の対照として用いた。豆を熱湯に2時間浸漬後,トレハロースまたは上白糖を使用して,IHクッキングヒーターで40分煮熟した。煮熟後1時間放冷した豆について,煮崩れ状態,破断特性,糖度を測定した。トレハロース使用の煮豆は,上白糖使用の煮豆より早く柔らかくなり,煮崩れしにくい傾向があった。トレハロース使用の煮豆の破断特性はトレハロースの保水性によって煮豆が柔らかくなると示唆した。トレハロースと上白糖の間には煮豆の糖度と組織の微細構造上の差異は何も見られなかった。
  • 濱田(佐藤) 奈保子, 関 洋子, 鈴木 徹
    2012 年 45 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     脱水シートを用いた,減塩かつ中干品の干物製造条件(塩漬条件及び乾燥条件)をマアジ,マサバ,サンマ,マイカについて確立した。生菌数に及ぼす脱水シートの影響を検討するため,従来の機械乾燥法ともう一つの代表的な干物製造法である灰干し法で製造した干物を低温保管(5℃)した際の生菌数の変化を経日的に計測したところ,脱水シートを用いて製造した場合のほうが有意に低かった。機械乾燥法による製造過程では,高温(27℃)条件での製造に加え,乾燥機内での付着菌や空中落下菌による二次汚染の影響が考えられるが,脱水シートを用いた場合は,干物製造時にシートが魚に密着しているため空気中の微生物による付着が少ないこと,また低温(5℃)下で脱水・乾燥が行われるため,微生物の増殖が遅いことが考えられた。灰干し法は,操作が煩雑であるため干物製造過程における微生物が混入しやすい。また,脱水シート法による脱水に比較すると,脱水効率が低く,徐々に脱水されることから,微生物が増殖しやすいことが考えられた。以上のことから,脱水シートを用いた干物製造方法は,他の代表的な干物製造法と比較し,微生物制御という点においても優れた方法であるといえる。
  • 亀谷 宏美, 鵜飼 光子
    2012 年 45 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     インスタントコーヒーのヒドロキシルラジカル捕捉活性をESRスピントラップ法により評価した。ヒドロキシルラジカル捕捉活性の評価にはスピントラップ剤5-(2,2-dimethy-1,3-propoxycyclophosphoryl)-5-methyl-1-pyrroline N-oxide (CYPMPO) を使用した。H2O2とCYPMPOのリン酸バッファー溶液をHg-Xeアーク灯で照射することで高純度のヒドロキシルラジカルを発生させた。ヒドロキシルラジカルとCYPMPOのアダクトのESRスペクトルは非常に安定しており,感度良く観測することができた。インスタントコーヒーは高いヒドロキシルラジカル捕捉活性を有すると結論した。
  • 富永 しのぶ, 前田 智子, 岸田 恵津
    2012 年 45 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     いり酒と早いり酒を江戸期の料理本の記述をもとに再現し,成分特性の分析と官能評価を行った。いり酒の呈味成分の特徴は,古酒にかつお節のIMPのうま味と梅干しのクエン酸の酸味が合わさったものであり,早いり酒は,古酒にしょうゆのグルタミン酸のうま味と酢の酢酸で酸味をつけたものであった。いり酒と早いり酒の塩分濃度は,いずれもしょうゆに比べて低かった。いり酒を保存すると,保存日数の経過に伴い,濁度とb*値が上昇した。この現象は35℃で顕著であったが,5℃での変化は小さかった。いり酒,早いり酒,しょうゆをそれぞれ刺身に使用すると,しょうゆに対する嗜好評価が高く,いり酒に対する評価は低かった。野菜につけた場合の好みの評点は,きゅうりとほうれんそうで早いり酒の評価が高く,早いり酒は現代の食生活に受け入れられ,利用可能であることが示唆された。
  • 大久 長範, 山崎 真奈, 古舘 葵, 山内 彩子
    2012 年 45 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     米デンプンの膨張は22.9%(w/w)以上のショ糖により抑制された。42.2%(w/w)のショ糖溶液では米デンプン粒子の崩壊も抑制された。米粉20 gとショ糖25 g及び蒸留水55 gを80℃で1.5時間加熱し米粉餡を得た。得られた米粉餡の物性(こし,付着性)は小豆加糖練り餡と似ていた。米粉(10~24%w/w)とショ糖溶液(25%w/w)を加熱すると見かけの糖濃度が5~15%増加したことから,米粉は1~1.5倍の水を吸収していると推定した。
資料
  • 小出 あつみ, 山内 知子, 山本 淳子, 松本 貴志子
    2012 年 45 巻 1 号 p. 48-55
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/03/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,高齢者が咀嚼しにくいと考えられる8種類の食材を試料として,切り込みにおける機器測定値,官能評価および咀嚼回数の関連から,高齢者における切り込みの有効性を検討した。切り込みによって煮にんじん以外の7試料(リンゴ,キュウ,煮ダイコン,煮コンニャク,カマボコ,イカ,タコ)は有意に軟らかくなった。咀嚼回数では切り込みによって全て試料の咀嚼回数が有意(p<0.05)に減少した。特にイカとタコの減少率が高かった。切り込みをした食材は高齢者に好まれなかったが,煮コンニャクとイカでは違和感は少なかった。したがって,イカへの切り込みが,高齢者に違和感を与えず,食材の硬さと咀嚼回数を減少させる有効な調理操作であることが示された。
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