日本調理科学会誌
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とろみ調整剤添加食品の香気フレーバーリリース (第2報)
―わさびの風味を保持する最適添加量の検討―
荒井 恵美子佐藤 吉朗長尾 慶子
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2016 年 49 巻 3 号 p. 223-231

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抄録

 咀嚼・嚥下困難者の食事におけるQOL向上を目的に,とろみ調整剤添加食品におけるわさび(西洋わさび)の最適添加量を検討した。魚のにおいのモデル食材として煮干しを選び,わさびの濃度を変えたキサンタンガム系と寒天系のとろみ調整剤添加試料を調製した。におい識別装置と官能評価による食品全体のにおいの変化と,GC-MSによるわさびの主要香気成分アリルイソチオシアネート(AITC)の量の変化から,香気フレーバーリリースを分析した。におい識別装置の結果より,食品全体のにおいの強さと質は,わさびの濃度の違いにより変化することが確認された。また,においの強さはわさびの濃度に依存しないと考えられた。官能評価の結果より,キサンタンガム系とろみ調整剤添加試料のわさび量を1/2および1/10に減らすと,喫食前のわさびのにおいは有意に弱まると評価された。GC-MSの結果より,ヘッドスペース中のAITCの量はわさびの濃度に依存しないと考えられた。また,AITC量の分析により,キサンタンガム系とろみ調整剤添加のわさび量2倍試料と,とろみ調整剤無添加のわさび量基準試料に有意差が認められなかったことから,とろみ調整剤添加食品でわさびを用いる際に,風味を保持する添加量の目安として,基準量の2倍が一指標になると考えられた。

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© 2016 一般社団法人日本調理科学会
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