2019 年 52 巻 2 号 p. 81-92
しょうゆと郷土料理の相性を知り,また料理の嗜好性等に対する食生活の影響を検討することを目的とした。試料は北海道,関東,九州の各2種類のしょうゆを用いた関東の郷土料理「関東風大根の煮物」と全国共通の料理「冷奴」とした。関東在住の幼児から高齢者を対象として官能評価を行い,食生活等の質問紙調査を行った。大根の煮物の嗜好性において相性がよかったのは関東と九州のしょうゆであった。また冷奴の嗜好性において相性がよかったのは,関東1種類および九州1種類のしょうゆであった。大根の煮物も冷奴も,早ければ幼児から試料の特徴の違いを嗜好の差として感知する可能性があると考えられた。味の嗜好性および普段の味かどうかについて,パネルの食生活等との関係を検討した。その結果,関東のしょうゆを用いた大根の煮物を普段の味と思う人の割合は,幼児より小学生以上の年代において高かった。また,関東のしょうゆを用いた冷奴の味を好む人の割合は,家庭の味付けが首都圏の人々,普段の味だと思う人の割合は,首都圏の味付けで居住年数が10年以上の人々において高いことがわかった。