2019 年 52 巻 3 号 p. 159-168
3品種のジャポニカ米(キヌヒカリ,ササニシキ,ハツシモ)を用いて,前報で改良した吸水率算出法により,米の吸水率に与える浸漬温度の影響について検討した。搗精度は,それぞれ93%搗精米(7分つき米)および91%搗精米(精白米)とした。米の浸漬温度は5℃,20℃,40℃とし,浸漬時間は10分から吸水率が平衡になるまでの最長24時間までとした。吸水曲線を比較したところ,3品種のすべての精白米と7分つき米において,平衡状態に達するまでに,5℃,20℃浸漬の吸水曲線が40℃浸漬の吸水曲線を超える現象が観察された。この「逆転現象」は米が粒状であることに起因することがわかった。本研究で用いた系の異なる3品種に起こった吸水率の逆転は従来の通説に反する現象と言える。ジャポニカ米の多くの品種で,この現象が起こる可能性が示唆された。