日本調理科学会誌
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52 巻, 3 号
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総説
報文
  • 関本 美貴
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 3 号 p. 138-146
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     ジャガイモは明治時代以降急速に普及が進んだ作物であり,現在はイモ類の中でもっとも多く食べられている。本研究では,ジャガイモの普及に関わる要因を生活者の視点から明らかにすることを目的に,大正末期から昭和初期の食生活におけるジャガイモの位置づけについて調査を行った。

     資料として「日本の食生活全集都道府県別編纂全50巻」およびそのCD-ROMを用いた。資料よりジャガイモに関する記述を収集し,その特徴により分類を試みた。

     ジャガイモの食生活上の位置づけは,洋風料理の材料,穀物の代用,小昼やおやつの材料,汁の実,煮物の材料と多岐にわたっていた。また地域によって位置づけは大きく異なり,自然環境やジャガイモ利用の歴史が関与していたことが示唆された。ジャガイモの優れた調理上の特性が各地の料理に生かされており,これが食品材料としてジャガイモが普及した要因の一つであると推察した。

  • 倉田 香織, 土橋 朗, 栗原 和幸, 板垣 康治
    原稿種別: 報文
    2019 年 52 巻 3 号 p. 147-158
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     魚肉に含まれる主要なアレルゲンの一つであるパルブアルブミン(PA)の含有量は魚種により異なると考えられる。本研究では,抗カエルPA抗体および患者血清を用いたELISAにより,サケ科12魚種の中で,シロザケが最も反応性が低いことを明らかにした。陸封型サケの抗原性は陸海型サケのそれよりも高く,特定原材料のアレルギー表示において陸封型のトラウトが表記されていない問題を明らかにした。124魚種の抗原性スクリーニングの結果,アナゴが最も高い抗原性を示した。硬骨魚鋼では,サバフグやシラウオが低かった。軟骨魚鋼であるメガネカスベ,ヨシキリザメ,カワヤツメの抗原性も低かった。精製PAを用いた定量の結果,シログチ17.6mg/g,シロサケ6.1mg/g,トキシラズ4.9mg/g,シシャモ5.9mg/gであった。

ノート
  • 森井 沙衣子, 坂本 薫, 白杉(片岡) 直子
    原稿種別: ノート
    2019 年 52 巻 3 号 p. 159-168
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     3品種のジャポニカ米(キヌヒカリ,ササニシキ,ハツシモ)を用いて,前報で改良した吸水率算出法により,米の吸水率に与える浸漬温度の影響について検討した。搗精度は,それぞれ93%搗精米(7分つき米)および91%搗精米(精白米)とした。米の浸漬温度は5℃,20℃,40℃とし,浸漬時間は10分から吸水率が平衡になるまでの最長24時間までとした。吸水曲線を比較したところ,3品種のすべての精白米と7分つき米において,平衡状態に達するまでに,5℃,20℃浸漬の吸水曲線が40℃浸漬の吸水曲線を超える現象が観察された。この「逆転現象」は米が粒状であることに起因することがわかった。本研究で用いた系の異なる3品種に起こった吸水率の逆転は従来の通説に反する現象と言える。ジャポニカ米の多くの品種で,この現象が起こる可能性が示唆された。

  • 黒沼 有里, 下村 道子
    原稿種別: ノート
    2019 年 52 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     はんぺんは多くの泡を含んだ独特のテクスチャーを持つ日本の伝統的な水産食品である。起泡材としての卵白や山芋のほかに近年は増粘多糖類(主成分はグアルガム)が使われることが多い。そこで,卵白,山芋,増粘多糖類がはんぺんの食味,硬さなどにどう影響しているのか,味覚検査,物性測定,光学顕微鏡観察を行って調べた。はんぺんの製造にはサメの鮮肉を用い,一般的なはんぺん製造の材料から卵白,山芋あるいは増粘多糖類を除いたオミッションテストを行ってその作用を検討した。従来のはんぺんでは,製造材料から卵白または山芋を除くと,はんぺんの硬さの値が高くなり,比重は大きくなり,食味は好まれなかった。増粘多糖類添加はんぺんは,増粘多糖類無添加はんぺんより硬さの値が低く,比重が小さく,また内部に丸みを帯びた多くの泡が観察された。増粘多糖類の添加は山芋の作用を補い,起泡性,気泡保持に効果があると推察された。

  • 宮下 朋子, 水尾 和雅, 原田 和樹, 長尾 慶子
    原稿種別: ノート
    2019 年 52 巻 3 号 p. 176-181
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     豆腐に撹拌時間を変えた自然薯を混合した嚥下困難者用製品を創成し,その物理的性質,嗜好性及び抗酸化能を検討した。製品のみかけ密度は,気泡の混入により撹拌16分まで減少を続け撹拌18分で増加したことから,撹拌16分の製品が良いと判断した。また,製品のテクスチャーは,消費者庁で定める嚥下困難者用食品の許可基準Ⅲの許容範囲内であった。10分から16分の撹拌時間で調製した製品に対する官能評価の結果,いずれも製品として認められるとの評価を得た。抗酸化能の指標となるORAC値は,674~601[TE/100 g]であり,これはニンジンの抗酸化能値に匹敵していた。この自然薯豆腐製品は,健康増進機能性を高めた嚥下困難者用食品としての可能性が示唆された。

資料
  • 松田 寛子, 山口 智, 佐藤 真弓, 加藤 由香, 白 璐, 柴田(石渡) 奈緒美, 坂田 菜摘, 島本 国一, 白井 隆明
    原稿種別: 資料
    2019 年 52 巻 3 号 p. 182-191
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     本研究では,日本人の食生活に欠かせない料理の1つであるサラダに着目し,サラダの色彩が色イメージと嗜好性に与える影響の解明を目的とした。基本色6色に該当する野菜で作製した,単色サラダ6つおよび配色(2色)サラダ11つの写真見本を用いて,20~40代の男女40名にアンケートを実施した。その結果,回答者40名において,基本色がもつポジティブなイメージは,単色サラダにおいては緑サラダに,配色サラダでは緑×赤サラダに抱かれやすいことが分かった。また,緑×赤サラダは配色率に関係なく,嗜好性においても高く評価された。一方,緑×白サラダに対する評価は低かった。さらに,「美味しそう」や「食べたい」と感じる配色サラダは,回答者の半数以上がいずれも450円での購入を希望した。以上の結果より,サラダにおける配色をはじめとした色彩は,色彩学的思考と必ずしも一致せず,サラダを食べる人個人が持つ長期的な心理的背景と共に嗜好性に影響を与えると示唆された。

  • 吉田 真美, 齋藤(大越) 麻美, 富井 架乃, 諸岡 祐佳里, 藤原 しのぶ, 冨田 綾子
    原稿種別: 資料
    2019 年 52 巻 3 号 p. 192-203
    発行日: 2019/06/05
    公開日: 2019/06/21
    ジャーナル フリー

     米の消費拡大と小麦アレルギー疾患等の対策を目的として,米粉と大豆粉を主材料とした新しいグルテンフリー食パン調製法について検討した。一般の大豆粉よりも脱臭大豆粉を使ったパンが好まれ,脱臭大豆粉:米粉=6:4の配合割合が最も評価された。これに,粉重量の30%の泡立て卵白添加が膨化と食味を促進し,比容積が向上した。その時の加水量は80%が適切だった。これらの配合組成で調製した食パンを脱臭大豆粉パンと称した。

     脱臭大豆粉パンの特性について検討し,米粉100%食パンおよび小麦粉100%食パンと比較した。検討項目は,パンの大きさ,物性,水分量,抗酸化性(ラジカル捕捉能),官能評価等である。さらに材料の粉類のイソフラボン量の測定もおこなった。総体的に,脱臭大豆粉パンの評価は小麦粉パンには及ばないが,米粉パンよりは優れていることが多かった。官能評価では脱臭大豆粉パンは,日常的に食べられるパンであると評価された。脱臭大豆粉中のイソフラボン含有量が高く,それを材料とした脱臭大豆粉パンは強い抗酸化性を示した。

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