2022 年 55 巻 2 号 p. 113-123
報恩講は真宗最大の行事である。毎年自宅で報恩講を行っている岐阜県白川村荻町に居住する家族の協力を得て平成26年から平成28年に調査した。この地域では報恩講を「ほんこさま」と親しみを込めて呼んでいた。お斎の料理食材は,山菜のこごみやわらびを摘み取り,四季折々に収穫した野菜の中で形の良いものを冷凍して用いていた。また,この地方の重要なたんぱく質源である「おはんべ」とよばれる堅豆腐は必ず準備していた。調理者の代替わりと,冷凍庫を購入したことで,品数は増加していた。平成28年度の調査では,料理は,20種類以上,30人分程度準備していた。膳や漆器は先祖代々受け継がれたものを用いていた。次世代への継承ついては,準備に費やされる時間や労力の制約を考えると,危惧される面も認められた。