日本調理科学会誌
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55 巻, 2 号
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2021年度日本調理科学会学会賞受賞記念論文
2021年度日本調理科学会奨励賞受賞記念論文
報文
  • 藤井 雄樹, 奥西 智哉
    原稿種別: 報文
    2022 年 55 巻 2 号 p. 76-83
    発行日: 2022/04/05
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル フリー

     15銘柄の良食味米について,食味に大きな影響を与えると報告された各種理化学分析を行った。なお,供試した良食味米は,大都市近郊の千葉県産米および家庭用ブランド米にグループ分けし,家庭用ブランド米は近年育種されたものを含んでいる。両者の分析値を比較することで,千葉県産米の特徴を明らかにした。

     千葉県産米の特徴はアミロース含有率が低いことで,特に「ふさこがね」で顕著であった。これはRVAの粘度特性値や精白米の吸水性からも裏付けられた。また,アミノ酸含量が低く,特に「ふさおとめ」で顕著であった。その他の味度値,付着量および糖含量は中程度であった。

     千葉県産米はアミロース含有率およびアミノ酸含量が低いことから,冷飯としての用途や強い火力での炊飯および保存を伴う用途に適性があると考えられた。また,アミロース含有率の低さにもかかわらず,「粒すけ」,「ふさおとめ」,「ふさこがね」の粘りが弱かったが,このことは加水量が多い可能性を示唆しており,検討を行う余地があると考えられた。

  • 萬年 遼, 羽根 あさこ, 佐野 文美, 大槻 尚子, 合田 敏尚, 下位 香代子, 市川 陽子
    原稿種別: 報文
    2022 年 55 巻 2 号 p. 84-96
    発行日: 2022/04/05
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル フリー

     フラボノイドは様々な機能性を有しており,心疾患や肥満等の発症リスク軽減効果が示されている。食事から摂取するフラボノイド量の把握は疾病予防効果との関連を調べる上で重要であるが,日本人の日常食におけるフラボノイド量に関する報告は少ない。我々は,日本人の日常食のモデルとして学内の給食経営管理の実習献立19種に含まれるフラボノイド(ケルセチン,ケンフェロール,ダイゼイン,ゲニステイン,アピゲニン,ルテオリン)量をHPLCにて測定した。また,調理前と調理後の含有量を料理95品について測定し,調理による変化を検討した。1食あたりのフラボノイド量の平均は,調理前7.03±0.49 mg(0.21±0.04 mg~25.96±1.90 mg),調理後7.31±0.56 mg(0.08±0.02 mg~31.57±2.11 mg)であり,献立間で大きく異なった。調理による変化では16品で有意な減少(p<0.05),10品で有意な上昇(p<0.05)がみられた。

ノート
  • 堀 光代, 平野 可奈, 下山田 真, 秋山 美展, 鈴木 徹, 長野 宏子
    原稿種別: ノート
    2022 年 55 巻 2 号 p. 97-104
    発行日: 2022/04/05
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル フリー

     機能性が知られている甘酒と抹茶を用いたクッキーを作製し,その特徴を検討した。女子短期大学生を対象としたクッキーの嗜好性の調査結果から,甘酒を用いたクッキーは外観において高い評価となった。香り,硬さ,甘みにおいて小麦粉クッキーより低い評価となったが,総合評価では各種クッキーに有意差が見られなかった。

     甘酒クッキーに含まれる糖の組成は,添加した甘酒由来の糖に大きく影響されることが明らかになった。DPPHラジカル消去能は,小麦粉クッキーに比べ,ウルチ米甘酒や黒米甘酒の添加によって有意な上昇がみられた。さらに,抹茶の添加がラジカル消去能の向上に効果的であることがわかった。

     甘酒クッキーに対する米アレルゲン特異的抗体による反応の結果,米の主要アレルゲンに対する反応はみられず,さらに加熱処理や麹菌により発酵過程において米アレルゲンの低減化がみられた。以上の結果により,甘酒の普及にクッキーへの応用は役立つと考えられた。

資料
  • 森田 亜紀, 早川 文代
    原稿種別: 資料
    2022 年 55 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2022/04/05
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル フリー

     本研究では,市販パン酵母で作成したパンの風味に着目し,パンの香りの特徴を官能評価で評価し,香りのイメージを色に置き換えて表現することで香りの特徴を第三者にわかりやすく伝える手段について検討した。

     9種の市販パン酵母を用いて作成したパンの成分分析(有機酸,遊離アミノ酸,香気成分)および分析型パネル15名による香りに関する官能評価(CATA法,色彩評価)を実施した。

     パンの成分として,主に酵母由来のアミノ酸量と酵母の発酵力に由来する香気成分に違いが見られた。パンの香りの官能評価では,発酵香は青,甘い香りは赤,橙,こうばしい香りは橙,明度の高さ,と相関があり,香りのイメージを色相と明度で表現できることが示唆された。本研究により,市販パン酵母を用いたパンの成分の特徴が明らかになり,また香りのイメージを色で置き換えた表現がパンの特徴を消費者にわかりやすく伝える手段として提案できる可能性が示唆された。

  • ―白川村荻町の調査より―
    堀 光代, 山澤 和子, 長屋 郁子
    原稿種別: 資料
    2022 年 55 巻 2 号 p. 113-123
    発行日: 2022/04/05
    公開日: 2022/04/11
    ジャーナル フリー

     報恩講は真宗最大の行事である。毎年自宅で報恩講を行っている岐阜県白川村荻町に居住する家族の協力を得て平成26年から平成28年に調査した。この地域では報恩講を「ほんこさま」と親しみを込めて呼んでいた。お斎の料理食材は,山菜のこごみやわらびを摘み取り,四季折々に収穫した野菜の中で形の良いものを冷凍して用いていた。また,この地方の重要なたんぱく質源である「おはんべ」とよばれる堅豆腐は必ず準備していた。調理者の代替わりと,冷凍庫を購入したことで,品数は増加していた。平成28年度の調査では,料理は,20種類以上,30人分程度準備していた。膳や漆器は先祖代々受け継がれたものを用いていた。次世代への継承ついては,準備に費やされる時間や労力の制約を考えると,危惧される面も認められた。

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