家庭でヨーグルトを作る際の温度と時間スケールの定量化の第一段階として,牛乳の乳酸発酵過程を減衰全反射赤外分光法(ATR-IR法)で32.5~50℃で20秒ごとに2時間連続測定を行った。各官能基の吸収帯面積をアミドIII(タンパク質)の吸収帯面積で割って吸収帯面積比の時間変化を調べた。C-O/アミドIII吸収帯面積比の減少と,C=O/アミドIII吸収帯面積比の増加は,いずれも1次反応で近似でき,得られた1次反応速度定数kの温度依存性から,糖の減少の活性化エネルギーEa=38 kJ.mol-1と頻度因子A=1.2×103 s-1,酸の増加のEa=31 kJ.mol-1とA=7.0×101 s-1が得られた。これらの乳酸発酵における糖の減少と酸の増加速度は,先行研究のヨーグルトのゲル化速度よりも遅く,ヨーグルト形成過程の時間スケールを支配している可能性があり,ヨーグルト形成時間スケールの定量化の第一歩となると期待される。