2024 年 57 巻 3 号 p. 166-174
本研究は,加熱により肉質が硬くなる豚肉を真空包装下で長時間低温加熱することで,肉質に軟化効果をもたらす過程を明らかにすることを目的とした。その結果,破断測定において,破断応力および破断エネルギーで通常加熱群と比較して,低温加熱群の加熱7時間以降で有意に低くなった。また,官能評価では低温加熱群の「軟らかさ」が,通常加熱群と比較して有意に高い評価となった。「総合」においてはVL62が高い評価を得た。不溶性たんぱく質画分の電気泳動では,低温加熱群の5時間以上の加熱において高分子領域のバンドが薄くなる傾向が認められた。
以上より,真空包装した肉をたんぱく質変性温度の65℃前後の62℃と70℃で13時間加熱した場合,加熱温度は70℃よりも62℃で加熱したほうが軟かくなることが示唆された。また,加熱時間については7時間加熱した時点で肉質が軟化し始め,13時間まで軟らかさが維持できることが示唆された。