2025 年 58 巻 1 号 p. 7-15
コーンスターチの調理科学的特性に対する高pHの影響について調べるため,緩衝液を用いてアルカリ性に調整したコーンスターチの諸特性について静的および動的粘弾性測定,DSC測定,顕微鏡観察,還元糖量の測定および色差測定により検討した。pHが12程度までは,3.00 wt%コーンスターチ糊液の粘度や粘弾性に大きな変化がなかった。また,糊化温度や糊化エンタルピーにも大きな変化はなかった。しかし,pH 9程度を超えるとアミロース鎖やアミロペクチン鎖の加水分解が起こり,pH 11程度を超えると澱粉粒子内の結晶構造が破壊された。その影響を受け,pH 12を超える強アルカリ性では,澱粉の糊化が起こりやすくなり,pHが13程度までは,澱粉糊液の粘弾性が高くなった。一方,pHが13を超える強アルカリ性では多くのアミロース鎖やアミロペクチン鎖が加水分解され,長さが短くなったことから,コーンスターチ糊液の粘弾性は低下した。