日本調理科学会誌
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スポンジケーキの気孔構造の形成に関与する澱粉粒の役割―バッターの気泡の表面に分散する粒の挙動―
藤井 淑子永井 純子楠瀬 千春松本 博
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1995 年 28 巻 4 号 p. 237-246

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抄録
本研究は,スポンジケーキ組織が形成される過程において澱粉が担う役割について解明することを目的とした。ケーキバッターに含まれる澱粉粒の挙動を知るために,通常は小麦粉,鶏卵,砂糖を主材料として調製されるスポンジケーキであるが,小麦粉の蛋白質などの粘性物質の影響を排除するために,小麦粉の全量を小麦澱粉,あるいは馬鈴薯澱粉に置き換えて,可能な限り単純化した系でスポンジケーキを調製した。気孔構造の電子顕微鏡観察によると,小麦澱粉スポンジケーキは球状連続気孔を形成したが,馬鈴薯澱粉スポンジケーキの気孔は球形のものは少なく,気孔壁が崩れて不連続な層状を成した。このような両ケーキの気孔構造の相違をもたらす要因の一つは,ケーキバッターに含まれる気泡の表面に,澱粉粒が均一に分散するか否かによる。小麦澱粉粒は均一に分散するが,馬鈴薯澱粉粒は気泡表面に均一に分散しにくいことがあげられる。第2の要因は,その粒が膨潤・変形した場合の粒構造の強弱によると考えられる。
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