2023 年 56 巻 2 号 p. 69-78
本研究の目的は,主訴である悪夢の種別と重症度をアセスメントし,イメージエクスポージャーとイメージリスクリプトの悪夢低減効果を検証することにある。本報告では,悪夢を訴える2名の高校生への面接経過を示した。クライエントAの主訴は,刺される,突き落とされるといった特発性の悪夢をみることであった。背景は,部活動と親密な友人がいないストレスであった。クライエントBの主訴は,トラウマ後の悪夢による中途覚醒時に,夢と現実の区別がつかず,混乱と恐怖を感じることであった。トラウマと関連した悪夢がみられ,後に強迫性障害と診断された。背景は,進路問題と幼少期の外傷体験であった。クライエントAには,エクスポージャー,リラクセーション,リスクリプト療法の組み合わせ(ERRT)を適用した結果,悪夢症状は短期間で消失した。一方,クライエントBには,イメージリハーサルセラピー(IRT)を適用した結果,頻度や強度が低減し,夢と現実の区別もつくようになった。青年期の頻回悪夢のケースにおいても,成人同様,イメージエクスポージャーとイメージリスクリプトを共通技法として使用するERRTとIRTの2技法の有効性が示唆された。