カウンセリング研究
Online ISSN : 2186-4594
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56 巻, 2 号
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資料
  • 石原 みちる
    原稿種別: 資料
    2023 年56 巻2 号 p. 43-54
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/31
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    スクールカウンセラー(SC)の活動の中でも教師に対するコンサルテーションは重要とされており,特に初心者のSCが利用できるモデルが必要とされている。本研究は,日本のSCコンサルテーションの現状に即したSCコンサルテーション実践モデルの作成を目的とした。はじめに,先行研究が明らかにしている日本のSCコンサルテーションの特徴を反映させたモデルを提案した。次に,このモデルの可能性を確認し改善点を探るため,SC経験3年以内の初心者SCを対象とする,講義と協力者自身の実践事例の検討を組み合わせた研修において,本実践モデルを使用した。研修前後の質問紙調査とグループ面接調査の結果,本実践モデルは初心者SCにSCコンサルテーションの基本的理解の枠組みを提供し,SCが自身のコンサルテーションを振り返って課題を整理し,次の実践に繋げられるなど,実践に寄与できる可能性が確認された。一方,教師への継続的支援の意味や見立てなどについて改善点が明らかとなり,モデルの修正を行った。今後の研究課題として,協力者の前職や校種に偏りがあったこと,実践モデルと研修自体の影響を明確に区別できなかったこと,予防的活動に関するSC コンサルテーションなどが指摘された。

  • 藤枝 静暁
    原稿種別: 資料
    2023 年56 巻2 号 p. 55-67
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/31
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    コロナ禍で未就学児への虐待対応件数が増加している。この問題の予防策として,オンラインを用いた子育て相談(オンライン子育て相談)と対面式子育て相談(対面相談)を併用する新たな子育て相談体制を構築した。2020年度~2021年度の2年間,幼稚園にて実践した。第一の目的は,対面相談とオンライン子育て相談の方法の違いによって利用件数,相談内容に違いがあるか否かを検討することであった。2年間全体,および,2020年度と2021年度ともに,園全体で,オンライン子育て相談よりも対面相談の利用が有意に多い傾向が確認された。相談内容に関しては,2年間を通じて,相談方法にかかわらず,子どもの性格・情緒に関する相談が多かった。第二の目的は,オンライン子育て相談の利用者4名を対象にアンケート調査を実施し評価を収集し,オンライン子育ての機能と課題を明らかにすることであった。その結果,オンライン子育て相談を利用した全員が「話しやすかった」「今後もまた使いたい」と肯定的に評価していた。本研究の課題として,1園における実践であること,オンライン子育て相談の方法に課題が残されていることと,その改善のための工夫が考察された。

ケース研究
  • 松田 英子, 川瀬 洋子
    原稿種別: ケース研究
    2023 年56 巻2 号 p. 69-78
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/31
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    本研究の目的は,主訴である悪夢の種別と重症度をアセスメントし,イメージエクスポージャーとイメージリスクリプトの悪夢低減効果を検証することにある。本報告では,悪夢を訴える2名の高校生への面接経過を示した。クライエントAの主訴は,刺される,突き落とされるといった特発性の悪夢をみることであった。背景は,部活動と親密な友人がいないストレスであった。クライエントBの主訴は,トラウマ後の悪夢による中途覚醒時に,夢と現実の区別がつかず,混乱と恐怖を感じることであった。トラウマと関連した悪夢がみられ,後に強迫性障害と診断された。背景は,進路問題と幼少期の外傷体験であった。クライエントAには,エクスポージャー,リラクセーション,リスクリプト療法の組み合わせ(ERRT)を適用した結果,悪夢症状は短期間で消失した。一方,クライエントBには,イメージリハーサルセラピー(IRT)を適用した結果,頻度や強度が低減し,夢と現実の区別もつくようになった。青年期の頻回悪夢のケースにおいても,成人同様,イメージエクスポージャーとイメージリスクリプトを共通技法として使用するERRTとIRTの2技法の有効性が示唆された。

展望
  • 永井 智, 木村 真人, 本田 真大, 飯田 敏晴, 水野 治久
    2023 年56 巻2 号 p. 79-107
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/31
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    本研究では,日本の研究における援助要請の主要な関連要因を概観した。CiNiiおよびハンドサーチによる1,055件の文献から,援助要請意図あるいは援助要請態度を測定し,関連要因としてネットワーク変数,パーソナリティ変数,問題の深刻さ,症状を扱う43件の論文を抽出した。その結果,おもに以下の6点が明らかになった。(1)ソーシャルサポートはその対象が援助要請の対象と対応する場合は,援助要請意図と正の関連をもち,それ以外の場合は見かけ上の相関のみにとどまる。(2)過去の接触経験は援助要請意図と正の関連をもつ。(3)自尊感情は援助要請意図・態度ともにほとんど関連をもたない。(4)相談ニーズとしての悩み・問題は,援助要請意図と正の関連をもつ。(5)精神的健康は援助要請意図とほとんど関連しないが,一部の抑うつの指標は負の関連をもつ。(6)援助要請態度は,自尊感情を除き一貫した関連がみられない。加えて,各論文のバイアスリスク,一部の指標について統合された効果量が報告された。最後に,今後の研究における適切な尺度使用の必要性,結果の統合のため基本的な分析結果を報告することの必要性などが考察された。

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