臨床リウマチ
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総説
トファシチニブの課題
山岡 邦宏田中 良哉
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2014 年 26 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

   関節リウマチ(RA)治療は生物学的製剤により飛躍的発展を遂げた.明確な治療目標を設定し,メトトレキサート(MTX)をアンカードラッグとして生物学的製剤と併用することで高い治療効果が得られる.しかし,RAは長期にわたる治療を強いられる上に,生物学的製剤は点滴や皮下注射を必要とすることから,生物学的製剤にかわる経口内服薬が切望されてきた.トファシチニブは経口内服薬でありながら投与開始早期から生物学的製剤と同等の治療効果を認め,2013年3月には本邦で新規抗リウマチ薬として承認された.当然,有害事象がみられており,生物学的製剤とは異なったプロファイルもみられている.特に帯状疱疹は,既存の生物学的製剤と比較して2~4倍と高い発症率が観察されており,アジアで多く,とりわけ日本と韓国で多いことが明らかとなっている.悪性腫瘍については,発症率は既存の生物学的製剤とかわらないが,RAでは合併の報告がない肉腫の発症がみられている.これらの発症にはリンパ球のなかでもCD4またはCD8陽性T細胞やナチュラルキラー細胞の抑制が関与している可能性が考えられる.当科でトファシチニブ臨床試験に参加した症例における感染症発症リスクの検討ではCD8陽性T細胞が投与開始前に低値であることがリスク因子として抽出された.このことは,トファシチニブ投与適応症例選択の可能性を示唆しており,悪性腫瘍と共に市販後調査に着目したい.

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© 2014 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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