臨床リウマチ
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26 巻, 1 号
臨床リウマチ
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
Editor's eye
誌説
総説
  • 遠藤 平仁, 橋本 篤
    2014 年 26 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)の関節病変の病態にリポキシゲナーゼ系の関与が報告され,多くの動物実験結果からも治療標的として着目されてきた.しかし実際のRA関節病変においてLTB4産生による急性炎症病態とLXA4産生による抑制病態同時に存在する.臨床治験において投与された産生酵素阻害薬やLTB4受容体拮抗薬の効果は不十分であり今日まで臨床適用されたものは無い.しかし近年ロイコトリエン(LT)の新たな役割として抗炎症作用による生体の恒常性維持や抗酸菌感染防御機構にLTB4/LXA4のバランスが関与していることが報告されておりRAとリポキシゲナーゼの臨床応用について新たな展開が期待される.
  • 山岡 邦宏, 田中 良哉
    2014 年 26 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
       関節リウマチ(RA)治療は生物学的製剤により飛躍的発展を遂げた.明確な治療目標を設定し,メトトレキサート(MTX)をアンカードラッグとして生物学的製剤と併用することで高い治療効果が得られる.しかし,RAは長期にわたる治療を強いられる上に,生物学的製剤は点滴や皮下注射を必要とすることから,生物学的製剤にかわる経口内服薬が切望されてきた.トファシチニブは経口内服薬でありながら投与開始早期から生物学的製剤と同等の治療効果を認め,2013年3月には本邦で新規抗リウマチ薬として承認された.当然,有害事象がみられており,生物学的製剤とは異なったプロファイルもみられている.特に帯状疱疹は,既存の生物学的製剤と比較して2~4倍と高い発症率が観察されており,アジアで多く,とりわけ日本と韓国で多いことが明らかとなっている.悪性腫瘍については,発症率は既存の生物学的製剤とかわらないが,RAでは合併の報告がない肉腫の発症がみられている.これらの発症にはリンパ球のなかでもCD4またはCD8陽性T細胞やナチュラルキラー細胞の抑制が関与している可能性が考えられる.当科でトファシチニブ臨床試験に参加した症例における感染症発症リスクの検討ではCD8陽性T細胞が投与開始前に低値であることがリスク因子として抽出された.このことは,トファシチニブ投与適応症例選択の可能性を示唆しており,悪性腫瘍と共に市販後調査に着目したい.
原著
  • 竹内 孝男 , 早石 雅宥, 濱田 泰彦, 早石 泰久, 葉山 悦伸 , 城口 福範 , 宮下 多美
    2014 年 26 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチ(RA)患者に対するインフリキシマブ(IFX)療法における1時間投与時の投与時反応出現率と有効性への影響を検討する.
    対象と方法:IFXを2時間で5回以上投与し,投与時反応が認められなかったRA患者のうち,同意の得られた22例に対し1時間投与を実施した.1時間投与による投与時反応出現率,DAS28-ESR,HAQへの影響を調査した.
    結果:1時間投与例における投与時反応の発現率は0%(22例中0例)であった.1時間投与後のDAS28-ESRとHAQの推移を投与時間短縮3回目まで確認したが,悪化は認められなかった.
    結論:IFXを5回以上投与しても投与時反応が出現しなかった症例に対して,1時間投与への切り替えが可能であった.また投与時間短縮による有効性への影響も認められなかった.
  • 松村 竜太郎, 中澤 卓也, 星野 東明, 梅宮 恵子, 杉山 隆夫, 縄田 泰史, 海辺 剛志, 池田 啓, 北 靖彦, 李 泰
    2014 年 26 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    目的:関節リウマチに対する生物学的製剤は効果が著しいことは明らかであるが,高額の薬剤であり,費用対効果面から患者さんの受け止め方は明らかではない.生物学的製剤を使用している患者さんの同薬剤に対する評価を,特に費用対効果の面から明らかにする事を目的とした.
    対象・方法:関節リウマチ患者で生物学的製剤を継続して使用している患者445例に無記名で,同薬剤の効果,費用に関するアンケート調査をおこなった.
    結果:生物製剤の全般効果は大多数で良いとしたが,月間医療費の増加額は3-6万円以上が過半数を占めた.その費用は,効果から比べても高いと答える人が半数であった.生物学的製剤治療により,実際に収入が増えた人は10%であったが,増加した人は年収で60万円以上の増加があった.家事などの労働時間が増加した人が全体の2/3で2時間以上の増加があった.
    結論:リウマチ医はこのような関節リウマチ患者の負担を理解し,適切な患者に生物学的製剤の導入を勧める必要がある.
  • 磯村 達也, 中村 郁朗, 長田 賢一, 川口 美佳, 寒河江 千鶴, 犬塚 恭子, 西岡 健弥
    2014 年 26 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
    目的:Revised Fibromyalgia Impact Questionnaire(FIQR)は,線維筋痛症を多面的に評価できる自記式質問票である.前身であるFibromyalgia Impact Questionnaireの欠点を改善する質問票として開発された.今回我々は,FIQRの原作版を日本語に翻訳し,言語的妥当性を担保した日本語版を作成した.
    対象・方法:言語的な妥当性を担保するためには,原作版との内容的な整合性を担保しつつ,日本人患者にも違和感なく受け入れられる翻訳を目指す必要がある.日本語版の作成は,原作者から許可を得た後,言語的に妥当な翻訳版を作成する際に標準的に用いられる手順に従って実施した(順翻訳→逆翻訳→患者調査).
    結果:日本語を母国語とする2名の翻訳者が,それぞれ日本語に翻訳し,一つの翻訳案にまとめた後(順翻訳),英語を母国語とする翻訳者が英語に逆翻訳した.翻訳は原作者に質問の意図を確認しながら進めた.次に6名の線維筋痛症患者を対象に,文章表現や質問内容の妥当性を検討するための患者調査を行った.参加者の性別は女性5名,男性1名,平均年齢は51.7歳であった.調査の結果,全体としては,表現や内容に特に問題はなく,わかりやすい質問票であるとの意見が殆どであった.
    結論:一連の検討を経て,FIQRの日本語翻訳版(JFIQR)を作成した.
  • 岡 寛, 小山 洋子, 中村 満行, 松本 美富士, 西岡 久寿樹
    2014 年 26 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
       線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)は,全身に広範囲な痛みを主訴とする原因不明の疾患で,本邦に推定で200万人以上存在する.痛みの強さの評価は,従来Visual Analog Scale(VAS),Numeric Rating Scale(NRS)等によって行われてきたが,これらは主観的である.痛みを定量化できれば痛みの認知療法となり治療は格段に進化すると考えられる.昨今,痛みを定量的に評価できる痛み定量化システム(Pain Vision®)がニプロ社より実用化され,患者の持つ痛みを客観的に評価される事が可能になった.
       我々はACR1990の分類基準を満たすFM患者83人の痛みを,現在のNRSとPain Vision®で測定し,比較検討した.その結果,Pain Vision®によるFM 患者の男性閾値は9.35±2.64μA(平均±SD),女性閾値は7.93±2.30μAであったが,FM の女性で閾値の低い集団が一定の割合存在した.Pain Vision®による痛み度は男性649.91±312.94,女性688.08±526.65,と男女ともに著明な高値を示し,FM 患者の痛み度は対照群の関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)患者の痛み度346.23±335.82より有意に高かった(P<0.0001).さらにFM 患者の女性では痛みの閾値が低く,疼痛知覚過敏との関連が示唆され,これに対して,RA患者では,閾値の低下はなかった.NRSの平均は,FM患者5.7±2.0とRA患者5.5±2.2では差がなかったが,FM患者ではNRSスコアが高いほど,痛み度が高い傾向が認められた(P=0.0177).
       Pain Vision®による痛み度の測定は,FM患者の痛みの病態を知るうえで,優れていると考えられる.
  • 中西 達郎, 小林 久美子, 石津 桃, 加藤 保宏, 川﨑 貴裕, 森田 貴義, 藤原 弘士 , 元根 正晴, 谷尾 吉郎, 宇田 裕史
    2014 年 26 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
       症例は69歳女性.56歳時に関節リウマチを発症.61歳時からメトトレキサートの投与を受けるも効果不十分であった.アバタセプト投与を開始9ケ月後から労作時呼吸苦が出現し胸部CTでスリガラス影を認めた.間質性肺炎と診断されステロイド大量投与にて改善を認めた.しかし,その後に新たなスリガラス影の出現を認め,サイトメガロウイルス肺炎の続発と診断された.アバタセプト投与中の注意すべき肺合併症と考えられた.
  • 金月 勇, 中原 淳夫, 野田 健太郎, 黒坂 大太郎
    2014 年 26 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
       27歳男性.25歳時に難治性ぶどう膜炎と再発性アフタ性口内炎より不全型Behçet病と診断された.治療抵抗性の眼病変に対しインフリキシマブ(IFX)を開始した.IFX投与により眼病変は改善した.IFX開始の15か月後に発熱,頭痛,ろれつが回らないなどの症状が出現した.髄液IL-6の上昇を認めたため神経Behçet病(NBD)と診断した.IFX投与中にNBDを発症したBehçet病の報告はない.IFX単独ではNBDの発症を完全には予防できない可能性が示唆された.
  • 朝戸 佳世, 野﨑 祐史, 井上 明日圭, 田崎 知江美, 李 進海, 湯本 妙子, 志賀 俊彦, 樋野 尚一, 矢野 智洋, 岸本 和也, ...
    2014 年 26 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2014/03/30
    公開日: 2015/05/30
    ジャーナル フリー
        The idiopathic inflammatory myopathies are systemic autoimmune diseases characterized by chronic inflammation, leading to progressive weakness of the proximal muscles. Myositis-specific or associated autoantibodies are often found in the serum of polymyositis (PM) and dermatomyositis patients. Anti-SRP (signal recognition particle) antibody is thought to be associated with severe forms of the disease, particularly those with heart and lung involvement and resistant to adrenocorticosteroids. We present a66-year-old female polymyositis patient with serious muscle weakness and high CPK level (21550IU/L). Despite initial therapy with high-dose methylprednisolone (1g/day x3days,i.v.) followed by prednisolone (1mg/kg/day,p.o.) plus cyclosporine A (150mg/day), muscle weakness was not improved and CPK levels were not reduced to less than3000IU/L. After treatment with intravenous immunoglobulin (IVIG), muscle strength was gradually improved and CPK levels were reduced to less than700IU/L. To our knowledge, there were few reports that PM positive for serum anti-SRP antibody treated with IVIG. IVIG might be a therapeutic agent of choice for steroid-resistant cases of serum anti-SRP antibody-positive PM.
臨床リウマチ医のための基礎講座
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