2021 年 33 巻 2 号 p. 92-98
関節リウマチ(RA)の発症には遺伝素因が関与するが,最も強い疾患感受性遺伝子はヒトMHCクラスIIをコードするHLA-DRB1である.ゲノム情報からの疾患リスク予測が進展しているが,RAの層別化や予後予測においてHLA遺伝子の重要性はさらに増していくことが予想される.従来「共有エピトープ」(shared epitope: SE)と呼ばれる5つのアミノ酸配列モチーフを含むHLA-DRβ鎖をコードするHLA-DRB1対立遺伝子とRAの関連が注目されてきた.最近の遺伝学的解析では,RAとの関連において特に重要なHLA分子内でSEとは異なる5つのアミノ酸が同定されている.HLA-DRB1遺伝子はRAの発症リスクだけでなく,疾患活動性,治療反応性,骨破壊,さらには生命予後とさまざまな臨床パラメータと関連することが知られている.その一方でなぜHLA遺伝子がRAの病態と関連するのかは,さまざまな説があるがまだ明らかではない.本稿ではRAにおけるHLA遺伝子に関する知見をまとめ,臨床における活用の可能性を概説する.