2021 年 33 巻 4 号 p. 299-309
目的:外来通院中の高齢リウマチ患者における認知機能の実態を改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)により明らかにしたうえで,認知症の疑いを持つと判定された症例の服薬アドヒアランスを評価することを目的とした.
対象・方法:2019年4月から6月のA施設リウマチ(RA)外来受診時に研究参加への同意が得られた65歳以上の患者38名を対象に,HDS-Rへの回答を依頼した.実際の施行は外来看護師もしくは公認臨床心理師が行った.その結果,認知症の疑いを持つと判定された症例については,診療録から罹病期間,既往歴,SteinblockerのStage・Class分類,治療の経過,家族構成などのデータ収集を行い,服薬アドヒアランスに関して症例検討を行った.
結果:全対象者の平均年齢は76.1±5.5歳(65〜86歳)であった.HDS-Rの合計点が20点以下で認知症の疑いをもつと判定された症例は,4症例(10.5%)であった.このうち18点の2症例では内服薬の自己管理が可能であった.また,17点と2点の症例では家族管理により,服薬アドヒアランスは良好に保たれていた.
結論:認知症の疑いをもつ対象者の割合は,全国の割合に比べてやや低い結果であった.HDS-Rの低い症例でも適切な本人・家族への介入により服薬アドヒアランスが維持できる可能性があると考えられた.