2024 年 36 巻 2 号 p. 93-101
【目的】日本での実臨床における,関節リウマチ(RA)に対してヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を使用した患者に対する不活化帯状疱疹ワクチンの有用性と安全性を明らかにする.
【方法】当科に通院している,2020年4月から2021年12月の間に不活化帯状疱疹ワクチンの投与を受けた,JAK阻害薬使用中のRA患者(n=69)において,帯状疱疹(HZ)の発症および合併症の出現について後方視的に検討した.
【結果】69例のRA患者(平均年齢 67歳,50歳以上:89.9 %,女性 75.4 %)のうち5例(7.2%)にHZの既往があった.JAK阻害薬の内訳(例)はトファシチニブ/バリシチニブ/ペフィシチニブ/ウパダシチニブ/フィルゴチニブ:3/27/6/29/4であった.不活化帯状疱疹ワクチン投与後,2例(4.1/100人・年,汎発性0例,非罹患率97.1%)でHZを発症した.2例とも75歳以上の患者であり,うち1例は帯状疱疹後神経痛(PHN)を発症した.不活化帯状疱疹ワクチン投与に関連して重篤な有害事象やRA疾患活動性の悪化はなかった.
【結論】実臨床において,JAK阻害薬使用中の日本人RA患者で不活化帯状疱疹ワクチンは安全にHZの発症を予防できる可能性があると考えられた.高齢,免疫抑制患者ではHZの発症に特に注意が必要と考えられた.