臨床リウマチ
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最新号
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誌説
総説
  • 植田 郁子
    2024 年 36 巻 2 号 p. 70-77
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

     ACR/EULARの全身性強皮症(SSc)分類基準(2013)および本邦のSSc診断基準(2016)において,SScにおける指尖部血管病変に関わる臨床症状は,診断の際の重要な所見に位置付けられている.血管病変の臨床像は,レイノー現象,指尖部の瘢痕,指趾の潰瘍,壊疽と様々で,血管病変の重症度の違いと考えられている.症状は一進一退を繰り返し,徐々に進行する.SScにおける潰瘍の出現は70%以上で,壊疽は10%程度,外科的な切断が5%程度,さらに大切断は1%程度におこる可能性があるといわれている.SScの潰瘍病変を診たら,他の末梢動脈疾患と同様の検査を用いて,血管病変を客観的に評価する.具体的にはankle-brachial pressure index(ABI)やskin perfusion pressure(SPP),サーモグラフィー,下肢血管ドップラーエコー,血管造影などがあげられる.これらの画像検査所見を参考に今後の治療を検討する.治療は血流改善薬や潰瘍治療外用薬の治療など保存的治療を主体とする.①感染が制御できない,②傷の痛みが制御できない,③血流改善治療による改善の見込みがないなどの理由があれば,切断が必要であると考えられる.ただし,その後の傷が治りにくい可能性や,下肢切断を選択する場合には周術期リスクが高いことなどに留意する必要がある.安易な切断は避けなければならない.

原著
  • 雪嶋 俊孝, 宮本 俊明, 米澤 春花, 大村 晋一郎, 小早川 知範
    2024 年 36 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】関節リウマチ(RA)患者におけるbaricitinib(BARI)及びfilgotinib(FIL)投与24週の臨床的有用性,安全性について比較検討した.

    【方法】2017年9月から2023年2月までに当院と協力施設の2施設においてBARI及びFILの投与を開始し,24週間経時的に観察可能であったRA患者98例を対象とした.BARI投与群67例とFIL投与群31例に分け,Disease activity score-28 for RA with CRP(DAS28-CRP),Simplified Disease Activity Index(SDAI),リウマトイド因子(RF),matrix metalloproteinase-3(MMP-3)の推移を比較検討した.安全性の評価として有害事象を調査した.

    【結果】BARI群,FIL群の順に投与開始時平均年齢69.2±13.0歳,64.6±13.9歳,平均罹病期間163.6±174.1か月,144.5±115.8か月であった.治療前b/tsDMARDs使用数は,それぞれ1剤19例,5例; 2剤7例,1例;3剤以上17例,19例であった.DAS28-CRP,SDAIのいずれも投与前と比して24週時において両群で統計学的に有意な改善を認めたが,両群間の変化率には有意差を認めなかった.RF,MMP-3は24週時に改善傾向を示した.継続率は,BARI群77.7%,FIL群74.2%であった.有害事象については,BARI群,FIL群それぞれ悪性腫瘍発生率3.0%,0%,帯状疱疹発生率1.5%,0%であり,その他の事象においても両群間に有意差を認めなかった.

    【結論】RAに対するBARIおよびFILの臨床的有用性及び安全性において投与後24週では有効性に差は認めなかった.今後の更なる症例による検討が期待される.

  • 瀧 昌也, 小寺 雅也
    2024 年 36 巻 2 号 p. 86-92
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:ロコモティブシンドローム(ロコモ)を有する患者は日常生活に困難さを感じており,関節リウマチ(RA)はロコモのリスクが高いこと,骨格筋量指数(SMI)が低いことが報告されている.我々は,RA患者のロコモの把握とSMIとの関連について調査する.

    対象・方法:膠原病リウマチセンター外来に通院しているRA患者160名を対象とした.ロコモの判定は,ロコモ25のスコアが16点以上をロコモあり群とした.SMIは,生体電気インピーダンス法を用いて測定し,男性7.0kg/m2未満,女性5.7kg/m2未満をSMI低値群とした.

    結果:ロコモあり群は全体の38%に見られ,年齢も有意に高かった.SMI平均値は男性7.2±0.9kg/m2,女性5.6±0.9kg/m2,SMI低値群は全体の55%に認められた.ロコモあり・なしの間にはSMIの差がなく,SMIが正常でも39%はロコモありに該当した.ロコモありに関連する因子としてロコモ25の屋内動作,身の回り,不安の項目が抽出された.

    結論:屋内動作能力・ADL能力の低下,転倒不安を有するRAは,ロコモに陥る可能性が高くなる.骨格筋量は影響しないが運動機能が低下するダイナペニアの存在が示唆された.

  • 矢部 萌美, 三崎 健太, 岡田 拓也, 樽谷 雄介, 山本 真子, 井上 兼史, 土橋 直史, 今泉 康彦
    2024 年 36 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】日本での実臨床における,関節リウマチ(RA)に対してヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を使用した患者に対する不活化帯状疱疹ワクチンの有用性と安全性を明らかにする.

    【方法】当科に通院している,2020年4月から2021年12月の間に不活化帯状疱疹ワクチンの投与を受けた,JAK阻害薬使用中のRA患者(n=69)において,帯状疱疹(HZ)の発症および合併症の出現について後方視的に検討した.

    【結果】69例のRA患者(平均年齢 67歳,50歳以上:89.9 %,女性 75.4 %)のうち5例(7.2%)にHZの既往があった.JAK阻害薬の内訳(例)はトファシチニブ/バリシチニブ/ペフィシチニブ/ウパダシチニブ/フィルゴチニブ:3/27/6/29/4であった.不活化帯状疱疹ワクチン投与後,2例(4.1/100人・年,汎発性0例,非罹患率97.1%)でHZを発症した.2例とも75歳以上の患者であり,うち1例は帯状疱疹後神経痛(PHN)を発症した.不活化帯状疱疹ワクチン投与に関連して重篤な有害事象やRA疾患活動性の悪化はなかった.

    【結論】実臨床において,JAK阻害薬使用中の日本人RA患者で不活化帯状疱疹ワクチンは安全にHZの発症を予防できる可能性があると考えられた.高齢,免疫抑制患者ではHZの発症に特に注意が必要と考えられた.

  • 三宅 信昌, 永野 満大, 五十嵐 中, 田中 栄, 松原 三郎, 菊池 啓, 駒ヶ嶺 正隆, 吉井 一郎, 近藤 正一, 三束 武司, 松 ...
    2024 年 36 巻 2 号 p. 102-113
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:高齢関節リウマチ患者の治療選択に関するエビデンスが少ないことから,本稿ではエタネルセプトのバイオシミラーであるエタネルセプト後続1が,高齢関節リウマチ患者の機能的能力,疾患活動性および健康関連QOLに及ぼす影響を評価した.対象・方法:全国7施設より前向きコホート研究(HAPPINESS)に参加した65歳以上の関節リウマチ患者を対象とした.ベースライン時,エタネルセプト後続1投与開始後26週目および52週目にGeriatric Locomotive Function Scale 25(GLFS-25)スコア,Disease Activity Score(DAS28-CRP),Simplified Disease Activity Index(SDAI)およびEuroQol 5 Dimensions 5 Level(EQ-5D-5L)を測定し,変化を評価した.結果:解析対象43例の平均年齢は74.2歳,平均罹病期間は6.9年で,31名が女性であった.GLFS-25スコアは,26週目と52週目にベースライン時と比較して有意な改善が確認された(15.42,17.60,26.37).DAS28-CRP(3.72,2.01,2.16),SDAI(17.27,5.18,6.08)およびEQ-5D-5Lスコア(0.70,0.83,0.83)も試験期間を通じて有意に改善した.結論:エタネルセプト後続1は高齢RA患者の機能的能力,疾患活動性およびHR-QoLを有意に改善した.

  • 児玉 暁, 伊藤 聡, 阿部 麻美, 大谷 博, 中園 清, 村澤 章, 石川 肇, 小林 大介, 佐藤 弘恵, 髙井 千夏, 長谷川 絵理 ...
    2024 年 36 巻 2 号 p. 114-130
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)患者の高齢化に伴い,高齢RA患者に対しても生物学的製剤やヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を使用する機会が増えている.その作用機序や全例調査結果などから高齢RA患者に使用される機会の多いアバタセプト(ABT)の使用状況について解析し,また血中半減期の短さなどから同じく高齢RA患者に使用されてきたエタネルセプト(ETN)と比較検討する.

    対象・方法:2010年7月から2018年3月に新潟県立リウマチセンターおよび旭川医科大学病院でABTを導入した241例のRA患者のうち,導入時の年齢が65歳以上であった143例を対象に,24か月を最終評価時として有効性や安全性をretrospectiveに解析した.また2008年5月から2018年3月に同院でETNを導入した463例のRA患者のうち,導入時の年齢が65歳以上の170例と,プロペンシティスコアマッチング(PSM)法を用いて解析し比較した.

    結果:65歳以上でABTを導入した患者の平均年齢は75.4±6.2歳で,疾患活動性スコアはいずれも有意に改善を認め,継続率は80.4%であった.PSM法を用いて解析したETN群との比較では,ABT群で疾患活動性,PSL減少量,継続率が有意に優れていた.

    結論:65歳以上の高齢RA患者においてABTは有効な治療手段であり,ETNと比べ疾患活動性の改善が有意に優れていた.

  • 吉井 一郎, 西山 進
    2024 年 36 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】Joint index vector(JIV)による関節リウマチ(RA)の活動性分類を,当院におけるRA症例のモニタリングデータを用いて作製し,その妥当性の検証を行った.

    【方法】RA患者のbaselineにおけるClinical Disease Activity Index(CDAI)の疾患活動性基準とHealth Assessment Questionnaire Disability Index(HAQ-DI)の寛解基準に照らし,Receiver Operating Characteristic analysis(ROC)により算出したVxyのcut-off index(COI)を求め,これをthresholdとした.CDAIとの間に有意の線形相関がない場合はその範囲におけるHAQ-DIも含めVzの相関に沿ってROCを行い,得られたCOIにより活動性を分類した.この分類方法を用いて各活動性間のCDAI,HAQ-DI等の指標に対する比較を行った.

    【結果】617名が対象となった.Vxy<0.1を寛解(REM),0.45>Vxy≥0.1かつ0.125≥Vzを低活動性(LJA),1.0>Vxy≥0.45もしくは0.45>Vxy≥0.1かつ0.125>Vzを中活動性(MJA),Vxy≥1.0を高活動性(HJA)とした.CDAIとの一致率はREM74.1%,LJAで66.7%,MJAで49.3%,HJAで77.0%であった.

    【結論】JIVを疾患活動性分類することで治療目標の設定をJIVで行える事が示唆された.

  • 吉井 一郎, 西山 進
    2024 年 36 巻 2 号 p. 140-146
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】既報にてJoint index vector(JIV)による関節リウマチ(RA)の活動性分類を発表したが,ビッグデータにおけるRA症例のモニタリングデータを用いてその妥当性を検証した.

    【方法】既存分類(cJIV)との比較対象としてJIVの評価のために使用した加工済みのNinJa 2015年のデータを元にcJIVを作製した手法で分類基準を作成した(NcJIV).基準の基となる指標はSimplified Disease Activity Index(SDAI)の疾患活動性基準とHealth Assessment Questionnaire Disability Index(HAQ-DI)の寛解基準である.NcJIVとcJIVを比較し,SDAI,HAQ-DI等の指標に対する比較も併せて行った.

    【結果】NcJIVでは11013例が,cJIVでは617名が対象となった.NcJIVではVxy<0.05を寛解(REM),0.25>Vxy≥0.05を低活動性(LJA),0.7≥Vxy≥0.25かつ0.225≥Vzを低中活動性(LMJA),0.7≥Vxy≥0.25かつVz>0.225を中活動性(MJA),Vxy>0.7を高活動性(HJA)とした.cJIVのNcJIVに対する一致率(感受性)はREM 100%,LJA 79.5%,MJA 80.3%,HJA 93.0%であった.

    【結論】cJIVはbig dataにおいても感受性が高く,汎用性の高い分類基準である事が示唆された.

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