2018 年 29 巻 p. 55-62
生産年齢人口の減少に伴う建設技術者,技能労働者の不足が顕在化しており,耐震補強工事においても,生産性の向上が求められている。そこで,筆者らは,施工の省力化・省人化を目的とし,プレキャストパネルと高強度繊維補強モルタルを用いた耐震補強工法を開発した。高強度繊維補強モルタルを耐震補強に用いた事例は少なく,そのせん断耐荷機構は明らかとなっていない。本稿では,本工法のせん断耐荷特性を明らかとするため,補強量を試験変数とした補強梁試験体による実験的検討を行った。その結果,開発した耐震補強工法による梁試験体のせん断耐力の向上を確認し,その破壊性状は,パネルの組立に用いる接続鋼材の降伏を伴うせん断破壊であることを明らかにした。また,補強を構成する各部材がせん断耐力に与える影響を明らかにした。