抄録
コラーゲンは全身に存在し、三重らせん構造を形成している。固形がんの周辺組織などでは、コラーゲンが分解されていく過程で三重らせん構造がほどけた(あるいは緩んだ)変性コラーゲンが生じ、蓄積していると考えられている。コラーゲン様ペプチド(collagen-mimetic peptide, CMP)はコラーゲンの構造を模倣する化学合成ペプチドの総称であり、その三重らせん形成能をうまく利用すればコラーゲンの緩んだ三重らせん部分にCMPをハイブリッド形成させることができる。本稿ではこのようなCMPの利用に関するこれまでの研究をまとめ、細胞外マトリックスの構造変化を標的とした新たなDDSのコンセプトを紹介する。変性コラーゲンと疾患の関連性については未知の部分も多いが、今後CMPを応用することで病態の理解が進み、新たな診断・治療戦略が開発されることが期待される。