抄録
DXd ADC技術は、DNAトポイソメラーゼI(TOP1)阻害剤であるエキサテカン誘導体(DXd)とカテプシン分解型ペプチドリンカーの採用により、高い薬物抗体比と血中安定性を実現した革新的技術である。最初のDXd ADCであるトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)は、HER2陽性乳がん治療薬として承認され、最近ではHER2低発現乳がんやがん種横断でのHER2陽性固形がんにも適応拡大され、有効な治療法がなかった領域における新たな治療薬となった。現在、TOP1阻害剤を用いたADCの研究開発がトレンドとなる中、DXd ADCプラットフォームでは5つの新規ADCの臨床試験を進めている。さらに新しい世代のADC技術では、より強力なペイロードや異なる作用機序のペイロードの応用が試みられている。これら新技術は、既存の治療に耐性を獲得した腫瘍など治療困難な腫瘍への効果が期待され、がん治療におけるさらなるパラダイムシフトをもたらすと期待されている。