抄録
ライム病はBorrelia burgdorferiに起因する感染性疾患であるが,今回,我々は慢性遊走性紅斑を主訴とした患者2例の皮膚組織より病原体の分離に成功した.症例1:62歳,女.右上腕部にマダニ咬着後,10日後位より同部に熱感をともなった環状の紅斑が出現したため受診.症例2:49歳,女.マダニ咬着の17日後,右側胸部の環状紅斑と,右膝関節痛を訴え受診.生検部の組織学的所見:2例とも真皮上層から皮下脂肪織にかけて血管,付属器周囲,あるいは巣状にリンパ球主体の細胞浸潤をみとめた.血清学的診断:2例ともELISA法にてBorrelia burgdorferiに対する抗体価の上昇を認めた.皮疹部組織をBSK培地で培養した結果,両側とも4週めよりボレリアの増殖が確認された.症例1より得た株をJEM1,症例2より得た株をJEM2として,SDS-PAGEやウェスタンブロット法による解析を試みた.