日本皮膚科学会雑誌
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原著
頭部脈管肉腫における血管新生因子の役割
天羽 康之浜田 祐子増澤 幹男勝岡 憲生
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2007 年 117 巻 11 号 p. 1727-1735

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抄録

血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor(VEGF)family)やangiopoietinは主要な腫瘍新生血管の増殖因子である.近年,腫瘍の増殖,浸潤や転移に,これらの血管新生因子が重要な役割を果たすことが明らかにされている.VEGF familyはVEGFA,-B,-C,-Dからなり,血管やリンパ管内皮細胞上のVEGF receptors(VEGFRs)(Flt-1,KDR,Flt-4)と結合して,内皮細胞の増殖や透過性を亢進する.またangiopoietin-2(Ang-2)は,VEGF-Aとの共存下で血管内皮細胞上のそれぞれAng-1,-2のreceptor(Tie2),VEGFR-2(KDR)と結合して腫瘍新生血管増殖や腫瘍の増殖,浸潤,転移や炎症反応に関与する.我々はヒト頭部脈管肉腫細胞がVEGF-A,-C,-D,Ang-2を産生しており,正常血管内皮細胞と同様にVEGFRs(Flt-1,KDR,Flt-4)やAng-1,-2のreceptor(Tie-2)を発現していることを明らかにした.さらに,ヒト頭部脈管肉腫細胞はVEGF-Aの添加で増殖が亢進したことから,これらの血管新生因子は腫瘍新生血管の増殖亢進のみでなく,脈管肉腫細胞上の受容体と結合して腫瘍増殖に直接作用していると思われた.また,頭部脈管肉腫患者血清11例の検討では,健常人と比較して頭部脈管肉腫患者血清中のVEGF-A,-D,Ang-2濃度が上昇しており,特にVEGF-DとAng-2は病勢とよく相関していた.VEGF-DとAng-2は頭部脈管肉腫の増殖,浸潤や,血管やリンパ管新生を伴う転移に重要な役割を果たしており,脈管肉腫患者の病勢の指標に成り得ると考えられた.

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© 2007 日本皮膚科学会
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