58歳男性.生来健康.初診の2カ月前から全身に膿瘍が出現し,当科紹介入院となった.入院後右大腿筋膿瘍に対してデブリードマンを施行.培養,PCRにて原因菌が
Nocardia brasiliensis(
N. brasiliensis)と同定された.肺CT検査等で肺ノカルジア症から播種した続発性皮膚ノカルジア症と診断した.ST合剤,塩酸ミノサイクリン内服により皮膚症状,肺CT所見ともに改善した.ノカルジアは主に土壌中に生息し,易感染宿主に感染する日和見感染症の原因菌の一種である.本邦でのノカルジアによる筋膿瘍の報告は9例あり,その内
N. brasiliensisによるものは2例のみであった.ノカルジアは培養における検出率が低く易感染宿主に発症しやすいことから全身播種した場合非常に予後不良である.
N. brasiliensisによる続発性皮膚ノカルジア症は現在までに4例の報告があるが自験例を除き,全例敗血症等で死亡している.今回積極的なデブリードマンを行ったことにより予後を改善することができた.
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