日本皮膚科学会雑誌
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原著
基底細胞母斑症候群に生じた infundibulocystic basal cell carcinoma の 1 例
山本 純照榎本 美生多田 英之福本 隆也宮川 幸子
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2007 年 117 巻 2 号 p. 153-157

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抄録
患者は 17 歳,男性.頭頸部を中心に多発する基底細胞癌,大脳鎌の石灰化,両側手掌の小陥凹,家族歴(父に同症)および幼児期の髄芽腫から基底細胞母斑症候群と診断されている.増大傾向にある基底細胞癌を適宜切除していたところ,前頸部の半米粒大,skin tag 様の有茎性小結節が徐々に黒褐色調となったため,局所麻酔下で切除した.病理組織学的に,腫瘍は真皮浅層にのみ存在し,基底細胞様細胞が索状あるいは分枝吻合状を呈しながら増殖していた.また上皮索から発する毛芽様構造はあったが,毛球および毛乳頭構造はなかった.腫瘍塊内には角化性囊腫があり,囊腫壁は毛包漏斗部の上皮に類似した細胞により構成されていた.以上からこの腫瘍を,近年稀な基底細胞癌の一型として Ackerman らによって報告された infundibulocystic basal cell carcinoma と診断した.infundibulocystic basal cell carcinoma は最初の報告以来,その病理診断において,毛包上皮腫などとの異同が議論されてきたが,自験例は基底細胞母斑症候群患者に生じており,このことは,infundibulocystic basal cell carcinoma が基底細胞癌の一型であるということを支持していると考えた.
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© 2007 日本皮膚科学会
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