日本皮膚科学会雑誌
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同種植皮についての實驗的研究
倉田 喜一郎
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1958 年 68 巻 9 号 p. 549-

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抄録

「同種植皮片は生着するか否か」,この問題は19世紀末より盛んに論議せられて来た.たしかに同種植皮に成功したという発表もあるが,本格的な実驗的研究においてはいづれも同種植皮片の生着は認められず,現在では,一卵性双生兒を除いては同種植皮片は生着しないというのが定説である.我國においては今までに相当数の同種植皮に関する発表がある.古くは,鈴木,亀谷,篠井の実驗的研究,戰後では,濱等の綜説,須﨑の研究がありいづれも同種植皮片は生着しないものと論じている.大森等は今次大戰直後,多くの廣範囲の火傷例に同種植皮を行い,かなり長期間の着床を認めたが,結局はいづれの皮片も脱落したので,その結果から本法は1種の生体繃帯法と考えてよいと述べている.同種植皮不成功の原因については種々の論議があるが,現在のところ抗原抗体反應説が有力である.Medawarは1943年第2次同種植皮現象を発見して,Acquired immunity hypothesisを唱え,近代的な同種植皮についての研究の端を開いた.以後,この問題は再び重視され,1953年,1954年には,International Conferencesで論議せられるに至つた.ここにおいて,著者は同種植皮不成功の原因を,抗原抗体反應説を中心として,近年進歩の著しい新しい檢査方法や,独自の考案になる檢査方法を驅使し,動物実驗を主としてこれを究明せんと試みたのである.

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© 1958 日本皮膚科学会
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