抄録
皮膚における炎症性病巣の組織変化内に出現する各種細胞の起原に関しては従来おびただしい研究報告がなされており,その細胞の1種として細網内皮系由来の細胞の存在が推測されているが,人体皮膚においてその由来を追求した研究者は少く,同一疾患の多数例についてこれを実証したものは未だこれを見ない.著者は上述の理由から炎症性皮膚疾患の組織変化に関与する細網内皮系細胞を実証しようと志したが,炎症性皮膚疾患はその種類が甚だ多く,今直ちにその全般に研究を拡大することは困難である.よつてそれら疾患のうち従来の文献において細網内皮系細胞に関する記載に乏しく,また症状が固定して短期間に変化することが少く,且つ発疹学的に互に類似する形態を示すものとして苔癬化を特徴とするVidal苔癬,Besnier痒疹および慢性湿疹の3疾患を選んだ.そしてその苔癬化病巣の皮内にデキストラン鉄を注射して,これに対する反応態度によつて細網内皮系細胞を組織学的に観察した.