1922年Storm van Leeuwen,Bien u. Varekampは簡單な方法でアレルギー性疾患の存在を知る目的で,人間皮膚鱗屑浸出液を抗原とする蕁麻疹型皮膚即時反應を創始発表し,その理論的意義は他日の評價にまかせることとして,主として気管支喘息,枯草熱等の診断に使用した.以来この方法は皮膚科領域に導入され(Rost其他),Storm反應と稱されるに至つたが,我々の生活環境にある殆んど全ての物質がアレルゲンとなる可能性を有すると考えられ,その後,人間の正常鱗屑のみならず各種の病的鱗屑,諸種体液,爪其他の物質を使用した即時反應の檢索成績が内外諸家により多数報告されている.勿論かゝる皮膚反應の意義に対する評價は区々であり,單に被檢者の適用物質に対する過敏性乃至非特異性陽性反應を示す場合も少くなく,皮膚反應のみで当該疾患に対する特異的アレルゲンを決定することの当を得ないのは言を俟たないが,欧米に於いては数十種のアレルゲンが市販されており,これらによる皮膚反應はアレルギー性疾患々者に対して,既にroutineの檢査とされており,アレルギー準備性乃至特異的アレルゲンの檢索に当り無視し得ないものと考えられる.よつて,著者は今囘次の9種類の物質を用いて各種皮膚疾患並びに健康者約1,900名に試みた即時反應の成績について些か報告したい.即ち,抗原としては再発性落屑性猩紅熱様紅斑(猩紅斑と略),脂漏性濕疹(脂濕と略)各鱗屑,聤聹,光田反應抗原,アストレメジン(Astと略),トリコフイチン(Trと略),刺螫昆虫(蚋・蚊・蚤)又,藥力学的皮膚反應としてアセチールコリン(Acと略)及びベンチールイミダゾソン(BIと略)を夫々選んだ.これらのうち,猩紅斑,脂濕の病的鱗屑,聤聹及び光田抗原はStorm抗原と同様の意味で試みた.Astは喘息治療剤として臨床的に使用されておる藥剤で,諸種喘息抗原,死滅痘苗,皮膚・睾丸エキス,ペプトン等が配合されているが,これはベニエ痒疹,神経皮膚炎等気管支喘息との関係が注目されている皮膚疾患に対する抗原性の有無を,又Trは白癬症に対する即時反應の意義を,昆虫浸出液は昆虫刺咬を機にb\々発現乃至増悪のみられる小兒ストロフルス,ヘブラ痒疹,結節性痒疹に対する抗原としての刺螫昆虫の態度を夫々檢討しようとしたものである.次に皮膚疾患に於ける藥力学的反應としては從来より,アドレナリン,モルフィン,カフェイン等による檢査報告に接するが,Acはアレルギー者に於いて副交感神経緊張乃至自律神経不安定状態の存在することが推定されている点並びにアレルギーに於けるAc説或いは假性アレルゲンとしての意義等に関連して,又BIは交感神経遮断剤としてAcと作用機轉が対照的とされている点に着目して夫々取上げられた.
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