抄録
乳児における巨大血管腫と栓球減少性紫斑病の合併例で,且つ両者が密接な関連を持つて消長する症候群は,今日ではその最初の記載者の名を附してKasabach-Merritt症候群と呼称され,広く知られている.1943年,最初の記載がなされて以来約10年間には同様の報告は5例のみで,血管腫と紫斑病の合併は偶発的なものではないかとの見方もかなり強かつたようであるが,1953年にいたり,Weismannが自験例と文献例を整理して両者には明らかな関連性ありと論じて以来,本症を一症候群として認める動きが強まり,以後同様の症例報告は急激に増加し,今日では83例(本邦30例)を数えるにいたつている.同時に本症候群の本態に関する研究も数多くなされ,種々の観点からの仮説が提起されているが,いずれも推定の域を出ず現在のところ定説はない.これは一つには,血管腫内で何事かが起りつつあるという点では異論がないにもかかわらず,病気の性格上生検を行なうことが危ぶまれる場合が多いことなどに起因して,血管腫の本態がよく知られていないことによるものと思わるれる.著者は,1962年以来6例の本症の組織を検討する機会を得たので,主として血管腫を組織形態学的に観察し,これと所謂strawberry-markとを比較することによつて,本症をひき起こす血管腫の特性を論じてみたいと思う.