抄録
人の皮膚結合織に存在するマスト細胞は,組織学的にはToluidine blueなどの塩基性色素によつてmetachromaticに染色される特殊顆粒の存在によつて同定される.近年,組織化学や酵素額の進展によりそれらの顆粒の性状がしだいに解明されるにいたり,この細胞の生理学的あるいは病理学的意義に関して多方面から注目がはらわれている.それとともにマスト細胞の電子顕微鏡レベルにおいても形態も明らかとなつてきた.さて,マスト細胞の細胞学において残された大きな問題の一つは顆粒形成の機転を解明することであろう.しかし,皮膚マスト細胞は特殊の例外をのぞけば分布がわずかで,また固定法上の難点などからこの方面の追求はほとんどなかつた.真皮結合織における多数のマスト細胞の浸潤を特徴とする色素性蕁麻疹において,その増殖は腫瘍性ではあるが,個々のマスト細胞は組織化学的にも微細構造上でも正常皮膚のそれとほとんど同一の性状を有している.