1982 年 92 巻 6 号 p. 665-
形質細胞にもっとも近い段階で腫瘍化したと考えられている多発性骨髄腫の末梢血,皮膚紅斑および皮膚腫瘤を電顕的に観察した.末梢血では細胞質に小胞やちぎれちぎれの粗面小胞体の増加した成熟 B-cell と思われるリンパ球の増加がみられ,併せてこの細胞の腫瘍化と考えられる小型の形質細胞様腫瘍細胞が少数認められた.紅斑では成熟 B-cell の小胞および粗面小胞体か著明に増加したリンパ球と,小型の形質細胞様腫瘍細胞の増加がみられた.腫瘍では形質細胞様腫瘍細胞が大型化し,細胞質には核をとりまいて粗面小胞体の著明な増加がみられる腫瘍細胞のみの増殖が認められた. B-cell は末梢血より皮膚に浸潤し,紅斑および腫瘤を形成する過程で小型の形質細胞様腫瘍細胞を経て大型形質細胞様腫瘍細胞に変化し増殖していくと考えられる.