日本皮膚科学会雑誌
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NCマウスにおけるSLE様皮膚病変の形成機序に関する組織病理学的研究
工藤 清孝安藤 不二夫大橋 勝浅井 淳平
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1985 年 95 巻 13 号 p. 1473-

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抄録

NCマウスは特異な遺伝形質を有し,加齢に伴い自己抗体の出現,細胞性免疫能の低下が見られ,同時にかなりの頻度で顔面に対側性にSLE様皮疹の出現することが知られている所謂ループスマウスである.本マウスで観察されるSLE様皮疹の形成機序を解明する目的で,その皮疹部を病理組織学的に検討し,併せて細菌学的ならびに免疫組織化学的な検索をも行なった.その結果,1)皮疹は雌よりも雄に好発した.2)初期組織像では基底層の液状変性,表皮萎縮および真皮における小血管の拡張が特徴的であった.3)皮疹部よりの細菌培養で黄色ブドウ状球菌が検出された.4)抗黄色ブドウ状球菌抗体を用いた免疫組織化学的検索で,黄色ブドウ状球菌が潰瘍,びらん部およびその周辺の角層内に検出された.5)NCマウス全血清を用いた酵素抗体法による自己抗体の検索で,NCマウスの表皮細胞細胞質およびマウス由来のL細胞細胞質と一部の核が染色され,その血清中に自己抗体の存在が示唆された.6)免疫組織化学的に表皮角層内の菌体表面にIgGが検出された.以上の観察結果により,皮疹形成が自己抗体による表皮細胞障害に基くことが強く示唆されるとともに,細胞性免疫能の低下による黄色ブドウ状球菌の易感染性が,その皮膚病変の発症,その後の展開に深く関与していることが考えられた.

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© 1985 日本皮膚科学会
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