1987 年 97 巻 2 号 p. 161-
Clear cell hidradenomaの1例を経験し,モノクローナルS-100蛋白のα,β鎖,CEA,ケラチンについて,PAP法により免疫組織学的に検討した.腫瘍部のclear cell,epidermoid cellはS-100蛋白α,β鎖とも陰性であった.CEAでは管腔様構造部,およびその周囲細胞,嚢腫壁内腔側,嚢腫壁細胞に陽性所見を認めた.ケラチンではepidermoid cellの一部,嚢腫壁細胞に陽性所見を認めた.正常の汗器官ではエックリン腺分泌部clear cellがS-100蛋白α鎖のみ陽性,導管部はα,β鎖とも陰性,myoepithelial cellはエックリン汗腺導管部細胞への分化が示唆された.またモノクローナルS-100蛋白抗体は汗器官腫瘍内での腫瘍細胞の起源,分化方向の検索にポリクローナルS-100蛋白抗体よりも有用であると考えられた.