コルチコステロイドの全身投与を行うと血中ヒスタミン値が低下することが知られているが,ステロイド外用剤投与時の血中ヒスタミン値に関する報告は見られない.ステロイド投与時に血清11-OHCSと血中ヒスタミンを同時に測定することにより,全身投与群(betamethasone内服)と外用治療群(ステロイド外用剤20~60g/day)を比較検討した.全身投与群のbetamethasone0.5~1.0mg/dayでは,血清11-OHCSと血中ヒスタミン値が並行して用量依存的に低下した.全身投与群の0.25mg/dayと外用剤治療群では血清11-OHCS値は低下したが,血中ヒスタミン値は増加した.外用治療群の血中ヒスタミン値の変化はbetamethasone内服投与群の0.25~0.50mg/dayの間に位置した.広汎な皮膚病変を有する皮膚科入院患者15症例のそれぞれについて外用治療群の内服相当量を検討すると血中ヒスタミン値では13症例が,0.10~0.50mg/dayの範囲に入り,血清11-OHCS値では10例が0.25~0.50mg/dayの範囲内であった.すなわち,13例が1.0mg/day以下であった.ラットにprednisoloneを20,50mg/kg/day投与すると血中ヒスタミン値が有意に低下した.末梢血では総白血球数,およびリンパ球,好酸球,好塩基球数も有意に低下した.ラットにhistamine.2HCLを投与すると,総白血球数,および,リンパ球,好中球,好酸球数が増加した.血中ヒスタミン値はステロイド全身投与群,生理食塩水投与群ともに投与前に比し有意に低下した.また,生理食塩水投与群に比しステロイド投与群の血中ヒスタミン値が有意に低下した.ステロイド内服投与群と動物実験において見られたステロイド全身投与時の血中ヒスタミン値の低下はステロイド投与後の好塩基球の減少とステロイドによるヒスタミンの代謝・排泄の促進が関与すると思われた.
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