1987 年 97 巻 5 号 p. 537-
58歳,男性の前額部に生じた黄赤色の腫瘍に対して光顕,電顕およびケラチン,ピメンチン,セロトニンを免疫組織化学的に検索した.本腫瘍はbasaloid(B)細胞より成るbasal cell epithelioma(BCE)と,一部に脂腺細胞を認めたBCE with sabaceous differentiation,および大小のsquamoid(S)細胞より成り,細胞質内管腔形成が認められ,apocrine duct squamous cell carcinomaと考えられる腫瘍の三者より構成されていた.大型のS細胞は前述した三者に陽性を示したが,Bおよび小型のS細胞は陰性であった.間質にも三者に陽性を示す大型のS細胞を散在性に認めた.一般にB細胞はpluripotentialな性格を持ち,癌化する可能性を自験例は示した.さらにビメンチンの染色性が角化細胞では未分化の指標となる可能性を示した.