抄録
症例は67歳の農婦,茨城県在住.昭和62年1月20日初診.7年前,左前腕に皮疹を生じ,徐々に拡大,その後表面に潰瘍も生じた.初診時,左前腕伸側に7.5×8.0cmの局面があり,辺縁やや隆起,表面の処々に小潰瘍がみられた.痂皮のKOH標本内に多数のsclerotic cellsがみられ,それらからの菌糸形成も目立った.組織像では真皮上~中層に感染性肉芽腫があり,そこの微小膿瘍内にsclerotic cellsが認められた.所属リンパ節腫張はなく,内臓への転移を思わす所見もなかった.痂皮と生検組織片から黒色菌を分離・培養し,分離菌をFonsecaea pedrosoiと同定した.フルシトシンの分離菌株に対するM.I.C.は>80μg/mlであった.治療にはフルシトシンの内服(1日10g)と局所温熱療法を併用,4ヵ月で瘢痕治癒した.痂皮内に多数の菌要素がみられたこととコルチコステロイドとの関連につき考察した.