スポーツ脳震盪の診断の指標となるバイオマーカーは確立されていない.本研究の目的は,学生アメリカンフットボール部の選手を対象に,侵襲無く採取可能な唾液検体を用いて,脳震盪受傷前後および脳震盪からの回復時のmicroRNAおよび蛋白発現を解析し,脳震盪の診断および回復の指標となる唾液中のバイオマーカーを探索することである.解析対象となったのは,脳震盪受傷前 (Pre) の6検体,脳震盪受傷後 (Post) の9検体,脳震盪回復後 (Rec) の3検体であった.これらの検体からmicroRNAの抽出および蛋白質量分析により,Pre→Post→Recの各段階で発現の変化するバイオマーカーを解析し同定した.解析の結果,神経再生に関係するとされるSPRR1A (Small proline-rich repeat protein1A) 蛋白が,Pre→Postで有意に発現が増加し,Post→Recで発現が低下する傾向にあり,スポーツ脳震盪における唾液中のバイオマーカーになる可能性が示唆された.