2014 年 14 巻 1 号 p. 17-21
金ナノロッドは近赤外域に吸収バンドをもち,吸収した光エネルギーは熱へ変換される。したがって,近赤外光により発生する熱を使って,薬物の放出をコントロールするドラッグデリバリーシステムが構築できる。まず,我々は二本鎖DNAで金ナノロッドを修飾した。すなわち,この金ナノロッドに近赤外光を照射すれば,フォトサーマル効果で金ナノロッドは発熱し,その熱で一本鎖DNAが遊離するというシステムである。また,加熱されることにより進行する逆Diels-Alder反応をつかったPEG鎖のコントロールドリリースシステムも構築した。一方で,フォトサーマル効果により亢進されるタンパク質の経皮デリバリーシステムも構築した。実際に,皮膚に発熱素子となる金ナノロッドを塗布し,オボアルブミン水溶液をのせ,近赤外光を照射した結果,皮膚の温度は上昇し,皮内へのオボアルブミンの透過が認められた。このように,近赤外光でコントロールされるドラッグデリバリーシステムは,さらに他の機能も組み合わせ,機能的なデリバリーシステムへと発展すると期待される。