抄録
本稿は、シリアスボードゲーム(アナログゲーム)の開発における「現場の専門家」と「ゲーム開発者」の間の断絶を
解消するための「翻訳的アプローチ」を提案するものである。専門領域におけるゲーム開発では、専門家は「ゲームで何ができるか」を具体的にイメージしにくく、開発者は「現場のリアリティ」を理解しきれないというジレンマがある。筆者らは、この双方の言語を変換する役割を「ボードゲーム編集者」と定義し、訪問診療現場での事例を通じてその有効性を検証した。実践においては、「目的・成果を深掘りするヒアリング」によって潜在的な課題をゲーム要件へと翻訳し、続く「プロトタイプを介した対話」によって、医師の専門知や現場の実感をゲームの仕様へ反映させるプロセスを採用した。その結果、医師がゲーム制作の主体としての意識を持ち、納得した状態で導入が進むという成果が得られた。本稿は、異分野協働におけるゲームデザインの方法論を提示するものである。