道南医学会ジャーナル
Online ISSN : 2433-667X
皮膚潰瘍を伴う重症下肢虚血に対し和温療法を行い著明な改善を認めた2症例
米澤 一也小室 薫小泉 卓也島津 香今川 正吾安在 貞祐畑中 紀世彦佐々木 孝夫庄司 哲之野田 一樹
著者情報
ジャーナル フリー

2019 年 2 巻 1 号 p. 5-11

詳細
抄録
【背景】和温療法は慢性心不全のみならず難治性閉塞性動脈硬化症にも著明な効果が認められるとの報告がある。方法は60℃、15分間均等和温室で保温し、さらに和温室外で30分間の安静保温で和温効果を持続させ、終了時に発汗に見合う水分を補給する。今回、重症下肢虚血による難治性皮膚潰瘍症例に和温療法を行い著明な改善が見られたので報告する。 【症例】症例1:歩行時の両側下肢痛を主訴とする70歳代男性。維持透析患者であり、2016年ころから下肢の色調不良があり、他医で2度の経皮血管形成術(EVT)を施行され、高圧酸素療法を受けるが疼痛は改善せず。高カリウム血症で当院救急入院となり、その際、右第3趾、左第1趾、第5趾に暗赤色の変色と皮膚潰瘍形成あり。当院でも右浅大腿動脈と膝下動脈にEVTを施行するが皮膚組織灌流圧(SPP)および症状は改善せず。和温療法を開始したところ、比較的速やかに右第1趾の潰瘍が改善し、約1か月間、50回の施行により下肢疼は痛軽減し歩行能力も改善し退院となった。 症例2:永続性心房細動で当院通院中の80歳代女性。右足指の疼痛、皮膚剥離と爪脱落で皮膚科受診していたが改善せず、形成外科にてCT施行。右前脛骨動脈(ATA)の高度狭窄および後脛骨動脈(PTA)の閉塞があり、SPPは右足背4mmHg、足底38mmHgと低下していた。重症下肢虚血の治療目的に当院入院。第4病にEVTを行った。前脛骨動脈はバルーンによる拡張が得られたが、膝下動脈は開通できなかった。SPPの改善は不十分であり、第9病日より約8週間にわたり、和温療法を週5回行った。和温療法開始後約8週間で潰瘍が治癒し、爪が再生した。SPPは足背41mmHg足底71mmHgと改善を示した。 【結論】和温療法は重症下肢虚血による難治性潰瘍に対して有用と考えられた。
著者関連情報
© 2019 道南医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top