抄録
海馬は、部分的な手がかりから実験文脈の全体を補完的に想起する機能(パターン補完仮説)や、遅延期間の情報保持に重要な役割を果たしていることが示唆されている。我々は1秒間 の遅延期間中に行動を静止させる課題を訓練したラットの海馬CA1領域から、課題中の局所脳波の記録・解析を行った。CA1への入力を反映する局所脳波には、皮質由来の高周波なガンマ波と海馬CA3由来の低周波なガンマ波が存在することが知られている。我々は遅延期間中のガンマ帯域の活動が高周波帯域から低周波帯域へとシフトする現象を確認した。 本発表ではこの結果より、遅延期間中に海馬が行動再開のタイミングの予測 を行っている可能性について議論する。